米国政府が一時的にNVIDIAのAIチップ「H20」の対中販売を許可したことを受け、バイトダンスやアリババをはじめとする中国大手IT企業が急ぎ購入に動いた。しかしNVIDIAは中国の顧客に対し、在庫分のみを販売し、新たな生産を行う予定はないと通告。トランプ政権による不安定な輸出政策に加え、供給面でも深刻な制約が浮き彫りになっている。
H20は元々、TSMC(台湾積体電路製造)での製造が予定されていたが、米政府の突然の禁輸措置により4月に生産が停止。NVIDIAは予約していたTSMCの生産枠をキャンセルし、すでに他社のプロジェクトに割り当てられている。このため、生産再開には新たなスケジュール確保が必要となり、CEOのジェン・スン・ファン(黄仁勲)によれば再生産には少なくとも9か月を要する。
加えて、同社はすでに第1四半期に45億ドル相当の在庫評価損を計上しており、戦略的に「在庫処分」に舵を切っている状態だ。こうした状況下で、中国市場での需要増に応えられないまま、再輸出のチャンスが事実上活かせないという矛盾が浮上している。中国市場はNVIDIAの売上全体の13%を占め、前年の21%からは低下したものの、依然として成長の柱の一つである。