過去10年間、中国のAI産業はNVIDIAのGPUに大きく依存してきた。特に大規模モデルの訓練や研究機関での開発ではH100やA100が標準であった。しかし米国による対中輸出規制が強化される中、その依存は急速に転換を迫られている。最新報道によれば、アリババとバイドゥは自社開発チップをAIモデルの訓練に導入し始めた。
アリババは2018年に中天微(C-Sky Microsystems)を買収し、平頭哥(Pingtouge Semiconductor)を通じてチップ事業を推進してきた。含光800(Hanguang 800)や倚天710(Yitian 710)などを発表し、今年は国内工場で製造した新型AI推論チップを内部テスト中とされる。このチップはNVIDIAエコシステムと互換性を持ちつつ、より広範な推論タスクに対応する設計となっている。資金面では過去4四半期で1000億元(約2兆円)を投入し、さらに今後3年間で3800億元(約7.6兆円)を追加投資する計画を示した。
バイドゥは2011年からチップ開発に着手し、2018年に初代昆崙(Kunlun)を発表。2021年には二代目で性能を数倍に引き上げ、最新の昆崙P800(Kunlun P800)はERNIEの訓練に直接使用されている。これによりアルゴリズムと計算能力の「二輪駆動」を実現した。
両社の取り組みはNVIDIAを完全に排除するものではないが、性能はすでにH20に匹敵するとの証言がある。中国AI産業は計算能力国産化の「臨界点」に近づきつつあり、基盤の自主性が現実味を帯びている。一方でNVIDIAも性能制限版チップの輸出交渉を継続しており、米中間の妥協を模索している。
短期的には規制や交渉が不確実性を高めるが、長期的には両社の開発が中国のAI計算基盤を再構築する可能性が高い。中国が完全な「AI計算能力チェーン」を築けるかどうかが、競争力を左右する分水嶺となる。

 
        
       
        